やせるための糖質制限から、健康寿命を延ばす糖質制限へ
糖質制限以前のダイエットは「カロリーを減らせばやせる」との発想だったため、必然的に食事量を減らすことになり、我慢を強いられるものでした。苦労の末にどうにか体重を落としても、我慢の反動から食べすぎてリバウンドすることも多かったのです。
ちなみにターゲットとなったのが1gあたりのエネルギー量が9キロカロリーの脂質。タンパク質と糖質は同じ4キロカロリーなのでどちらを食べてもよいことになり、栄養素の働きを無視してカロリーだけでダイエットを実践するのはかなり危険です。
一方、糖質制限は「太る原因である栄養素(糖質)をカットする」ので、食べる量にはこだわりません。お腹いっぱい食べながらやせられることから、「満腹ダイエット」というフレーズで脚光を浴びた面もありました。
ただ、60歳からは満腹で苦しくなるほど食べる必要はありません。そもそも20代、30代ならまだしも、食後に動けなくなるまで食べられるという方は少ないのではないでしょうか。
消化吸収器官を無駄に疲れさせないためにも、60歳からの糖質制限は腹八分目がベスト。早め、軽めの夕食後、睡眠時間を挟んで空腹の時間をつくりだせば、長寿遺伝子の「サーチュイン遺伝子」のスイッチを入れられる可能性もあります。サーチュイン遺伝子とは老化や寿命を左右する遺伝子といわれ、活性化させるために有効なのが「空腹」なのです。
腹八分目は主食を摂らない糖質制限の得意とするところですが、タンパク質まで減ってしまっては困るので、例えば10時と15時など、適宜タンパク質の間食を入れるのもおすすめです。
年齢とともに消化吸収力は低下していきます。例えば、ゆで卵にしても「がんばれば1個食べられる」と無理して1回で食べようとせずに、朝半分、10時の間食で残り半分という食べ方にしましょう。飲食後に代謝に要する時間、汗や尿・便による損失などを考慮すると、小刻みな栄養摂取が60歳からの体に合った食べ方です。