序盤で得票数トップになるが
やはり無効票も多かった

 スペルの連呼が四六時中どこかからきこえてくる。ブリンクリーの支援者たちが入手できる限りの、ありとあらゆるスピーカーから流れているのだった。

 投票率は非常に高かった。「投票日の夜に開票状況が発表されだすと、あちこちから警戒の声があがった」とW・G・クラグストン(編集部注:長年にわたってカンザスの政治を取材してきた人物)はいう。

「開票序盤において、ブリンクリーが断然トップに出ていたのである……膨大な数の有権者が投票用紙に彼の名前を書いており、彼をレースから追い出そうと考えていた集計の役人たちの計画は崩れた。みんなで額をつきあわせて、集計の任務よりも、ブリンクリーを潰すことに意識を集中したが、だめだった」

 集計は10日間かかった。最終結果は次のとおり。

ウッドリング(民主党)21万7171票
ハウケ(共和党)21万6920票
ブリンクリー(無所属)18万3278票

 しかしこの票数には、Doctor BrinkleyやDoc Brinklyなど、余計な言葉を付加したり、異なる綴りで記されたりした票はふくまれていない。これらはすべて無効とされた。

 そればかりでなく、ブリンクリーを副知事、米国上院議員、カンザス州最高裁判所判事、そのほかの役職に就かせようとした枠にはまらない自由な考えの持ち主の票も当然ながら無効である。

6票に1票の割合で無効に
その数なんと、3万から5万票

 今回のブリンクリーの得票数は、オクラホマ州の3つの郡でそれぞれ当選した候補者よりも多く、もしそれらの地で立候補していたらブリンクリーが勝っていたわけだ。

 無効となった票は、いったいどのぐらいあったのか?州外の大新聞デモイン・レジスターは、次のような見解を示している。

 投票用紙に正しく氏名を書いていないという理由で、6票に1票の割合で票が無効になった。そうしたことがなかったら、ヤギの性腺を扱う専門医であり、9月に州の医療委員会から医師免許取り消しを食らったドクター・J・R・ブリンクリーは、現在カンザス州知事の職に収まっていたはずだ。

 投票用紙に名前が印刷されていないにもかかわらず、ブリンクリーは18万3000票以上を獲得。それ以外に、彼に投票したのに、氏名の書き間違いによって無効にされた票の数は3万票から5万票あったと推定されている。