
東急電鉄は4日、東急多摩川線を矢口渡~蒲田駅間から地下化し、京急蒲田駅付近まで約1.7キロ延伸する「新空港線」について、国土交通省から都市鉄道等利便増進法に基づく営業構想の認定を受けたと発表した。約1250億円を投じる計画に期待されることとは。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
蒲田駅と京急蒲田駅の
「ミッシングリンク」解消へ
新空港線は事実上、多摩川駅と蒲田駅を結ぶ東急多摩川線を京急蒲田間まで延伸する計画だが、東横線の一部列車が多摩川駅から直通運転を行うことで、東京南西部の空港アクセスを向上させる。また、この構想がかつて「蒲蒲線」と呼ばれていたように、蒲田駅と京急蒲田駅の「ミッシングリンク」の解消も期待されている。


新空港線は、2016年の交通政策審議会答申第198号で「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」のひとつに位置づけられたもので、国際競争力強化の拠点である渋谷・新宿・池袋などや東京都北西部・埼玉県南西部と羽田空港とのアクセス利便性の向上に寄与するとされた。
都市鉄道等利便増進法とは、連絡線を整備して直通運転を実施するなど、既存の施設を有効活用して都市鉄道ネットワークを高度化する事業を「受益活用型上下分離」方式で整備するため、2005年8月に施行された法律だ。2019年11月に開業した「相鉄・JR直通線」、2023年3月に開業した「相鉄・東急直通線」も、同法を活用して整備された(両線の整備のために制定された法律とも言われる)。
受益活用型上下分離では、第三セクターや鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)などの公的な主体が「整備主体(下)」、既存の鉄道事業者が「営業主体(上)」となる。整備費の3分の2は国と地方から補助を受け、3分の1を整備主体が資金調達する。営業主体は整備主体に施設利用者を支払い、整備主体はこれを原資に借り入れを償還する。
営業主体は東急電鉄、整備主体は2022年に大田区が61%、東急電鉄が39%を出資して設立した第三セクター「羽田エアポートライン」が担う。両社は1月17日に「営業構想」「整備構想」の認定を申請しており、今回、羽田エアポートラインも同時に整備構想の認定を受けている。