約1.7キロの延伸に
約1250億円を投じる必要は?
しかし、約1250億円を投じてまで「渋谷・新宿・池袋などや東京都北西部・埼玉県南西部と羽田空港とのアクセス利便性の向上」は必要なのだろうか。
JR東日本が2014年に発表した「羽田空港アクセス線」構想は、東京駅に接続する「東山手ルート」、りんかい線・京葉線に接続する「臨海部ルート」に加え、渋谷・新宿・池袋に接続する「西山手ルート」の3ルートを計画しており、「東山手ルート」「臨海部ルート」は2031年度に同時開業を予定している。
西山手ルートはりんかい線トンネルとの連絡線を追加整備する必要があり、着工の目途は立っていないが、完成の暁には、新宿~羽田空港間を約23分で結ぶ予定だ。東山手ルートの開業だけでも、新宿から中央線快速、池袋から地下鉄丸ノ内線で東京駅に出て、1回の乗り換えで羽田空港に行けるようになる。渋谷は元々、山手線利用で品川から京急乗り換えが可能だ。
確かに池袋、新宿、渋谷といったターミナルをピンポイントで見ると、新空港線の意義は小さく見える。だが、東急沿線や直通先の地下鉄有楽町線・副都心線、東武東上線、西武池袋線など、東京都北西部や埼玉県南西部から利用する場合は、現状も今後も2回の乗り換えが必要になる。大きい荷物を携行しがちな空港アクセスでは、乗り換え回数が少ないことに価値があり、これら各路線から京急蒲田まで直通すれば、一定の競争力はあるだろう。
鉄道による羽田空港アクセスは、京急と東京モノレール(2002年にJR東日本グループ入り)で分担しているが、羽田空港の利用者数は再国際化以降、増加し続けている。JR東日本はモノレールより輸送力が大きく、速達性の高い鉄道(羽田空港アクセス線)へのシフトを図り、京急も空港線を増便するため、羽田空港国内線ターミナル駅に引き上げ線の新設を計画している。東急の参入に目が行きがちだが、新空港線は京急との接続を前提とした計画であり、既存の体制を覆すものではない。