東横線との直通運転実施に伴い
問題となる東急多摩川線のホーム長

 さて、今回の発表は前述の通り1月17日の申請が認可されたもので、基本的には申請時から内容は変わらないが、営業構想については新情報が開示されたので確認しておきたい。

 第一は「東横線から乗り入れる列車が停車できるよう、東急多摩川線多摩川駅および下丸子駅の乗降場(プラットホーム)の整備などをあわせて行う想定」との記載だ。

 東横線との直通運転実施に伴い問題となるのが、東急多摩川線内のホーム長である。同線は元々、東急最古の路線となる目蒲線(目黒~蒲田間)をルーツとして、2000年に目黒~多摩川間を目黒線として分離した経緯がある。

 目黒線区間は大型車両が走行可能な構造に改められたが、残された東急多摩川線区間のホームは目蒲線時代のままなので、最大でも小型18メートル車4両分(72メートル)しかない(現在の営業列車は3両)。

 東横線は短くても20メートル車8両(160メートル)なので、停車駅はホームを倍以上に延長する必要があるが、最大のネックが多摩川駅だ。前述の目黒線分離にあたり、既存の目蒲線多摩川駅は目黒線用となったため、東急多摩川線のホームは地下に新設した。

 地下駅を営業しながら改良するのは、ただでさえ非常に時間と手間がかかる。問題は、このホームが延伸を想定した設計になっているかだ。東急に聞くと「当時の詳細な検討経緯を把握できる資料を確認できず、ご回答致しかねます」とのことで、「現在の多摩川駅の構造などをふまえ、ホーム延伸などの必要な改修に向け、詳細な計画を行ってまいります」という。工事の全体像はまだ見えないようだ。

 下丸子が対象となった理由についても聞くと、「乗降人員などのお客さまの利用動向・運行計画などを総合的に判断し、優等列車の停車駅とする構想としております」との回答だった。2023年度の東急多摩川線各駅の乗降客数は、蒲田の7万6381人が最多で、下丸子は3万381人で続く。武蔵新田、矢口渡も2万4000人を超えるが、下丸子は定期利用が3分の2以上を占めるのが特徴だ。

 なお、新空港線開業後も東急多摩川線に列車待避施設は整備されない。先行列車を追い抜くことができない平行ダイヤになるため、下丸子だけと言わず、武蔵新田、矢口渡に停車させてもダイヤ上の問題はない。しかし、下丸子には十分なスペースがあるのに対し、武蔵新田、矢口渡の両駅は前後には踏切があり、ホーム延長が物理的に不可能という事情がありそうだ。