ここにも前向きに生きるためのヒントがある。

 ある男性は、自分が離婚経験者であることを心の負担に思っている。「自分は1度結婚に失敗した男であり、別れた妻がいる」ということを、現在の彼女に対して申し訳なく思っている。

 彼女は自分よりずっと若く、他にもっといい男と結婚するチャンスがいくらでもあるように思える。ほんとうに自分でいいのだろうか。彼女は平気な顔をしているが、実は別れた妻のことを気にしているのではないだろうか。

 ところが彼女と話をしてみれば、全然そんなことは気にしていないのである。今時バツイチの人なんて珍しくないじゃない、バツイチの男性と結婚している友達けっこういるわよ、とケロッとしたものである。

 結局、悩みというものは本人のこだわりでしかない。この彼は離婚は人生の挫折だと思っている一方、彼女のほうはちっともそうは思っていない。つまり、彼は彼女に対して負い目を感じる必要はまったくないのである。

 そう考えると、彼の悩みは空想や妄想によるものでしかない。自分でその妄想から抜け出すしかあるまい。

 あなたの悩みも、そんな空想的なものではないだろうか。現実に困ったことが起きていないのに、勝手にいろいろ予測して困ったり、相手の気持ちを推し量りすぎて悩んだりしていないだろうか。

「私は無能だ」と悩む人に精神科医が「大いに悩みなさい」とアドバイスするワケ『心が晴れる言葉』(斎藤茂太 あさ出版)

 自分の悩みを話してしまえば、それだけですっきりすることもある。

「みんなもそうなのか」「みんなこんなことは全然気にしていなかったのか」ということが意外と少なくないはずである。また、人間である以上、ほかの人たちもあなたと同様に、まわりの人から見れば悩みとは思えないことで悩んでいるはずである。

 まわりの人たちの悩みが、あなたにとってはたいしたものでないように、あなたの悩みも、まわりの人たちにとってみればたいしたものではないのである。

 そう考えれば、気持ちの持ち方がずいぶん変わってくるのではないだろうか。