でも、二人だけで話をするときは、年上部下に上座を譲ることもありだと思います。なおかつ丁寧な言葉で話をする。しかし、言わなければならないことははっきりと言う。敬意を示した上で言うべきことは言う、このメリハリが大事なのです。

 また、かつての上司を肩書で追い越したといっても、その人にはその人なりの知識やノウハウ、人脈があります。これを埋もれさせてしまうことは会社の損失につながります。

 分からないことは、率直に相談してみる。すると年上部下は、“自分が頼りにされている感”が得られて、何かあれば支えようという気持ちになります。立場は逆転しても“重要感”を与えることが大事です。

3代目と対立した取締役
ある日社長に呼び出され、告げられたのは…

無人のデスク写真はイメージです Photo:PIXTA

 こんな実話があります。ある中小企業で、社長が2代目から3代目に変わりました。社長の年齢が30歳ほど若返ったわけです。

 2代目が社長を務めていた時には60代の取締役Aさんがいて、彼は番頭としての能力と忠誠心がとても高い方でした。

 一方で、Aさんは3代目に対しては厳しく接していました。将来の社長に「仕事のノウハウを叩き込むため」と言えば聞こえがいいですが、単にそりが合わなかっただけかもしれません。そんな経緯があるため、Aさんは、先代が辞める時に自分も引退すると決めていたそうです。

 そんなある日、Aさんは3代目社長から呼び出されました。彼は、「引導を渡される」と覚悟して、社長室に乗り込んだそうです。

 ところが3代目社長は、こう言いました。

「経験の浅い自分を助けてほしい。ひいては常務になってくれませんか」