院生・ポスドクが、入社して活躍するための鍵は?

 入社した院生・ポスドクが、組織内で活躍するための鍵は何か? うまくいくケースとそうでないケースの違いはどこにあるのか? まず、募集段階のポイントを山田さんに語ってもらった。

山田 採用のスケジュールについて言えば、院生は、「通年採用」が効果的です。学部生は、ある程度、同じスケジュールで動きますが、院生やポスドクはバラバラです。博士課程1年目で内定をとって研究に没頭した人の例を先ほど紹介しましたが、一方で、年度末の1月や2月になって卒論がようやく仕上がり、その数ヵ月後の4月から企業で働きたいという院生もいます。通年採用を行っていないと、こうしたケースには対応できません。

 また、求人票に「修士・博士を求めている」ことをしっかり明記するのもポイントです。学部生と同じ枠で募集するのでは関心を引きません。「博士を積極採用」といったワードを使うなど、「こんなポジションがあるので来てほしい」「こんな課題解決を期待している」といったことが求人票に書かれていれば、ミスマッチも減っていきます。給与などの待遇においても、学部生とは別枠にしたほうがよいでしょう。

 山田さんは、院生の採用面接は人事担当者だけで行うのではなく、配属予定の部門担当者が同席することを勧める。

山田 院生やポスドクといった高度専門人材は、ポテンシャル採用の学部生や業務経験を重視する中途採用とは評価の軸が異なるはずです。入社後のフォローにつなげる意味でも、現場の担当者が面接時から関わるとよいでしょう。企業への就職を希望する院生は、「ロールモデルが見えない」と言います。「入社して活躍できる場があるのか?」「どのような形で頑張ればいいのか?」といった不安を感じているのです。その不安を払拭し、働くイメージが明確になると、入社への気持ちが上向いていきます。

 採用活動では、院生のマインドに寄り添うことが大切だが、それは、入社後についても言えるようだ。社内で活躍してもらうためのポイントは?

山田 修士・博士人材の採用実績がある企業ほど、業務の渡し方が上手です。必要な支援は行うものの、ある程度まとまった課題やタスクを与えたうえで、本人に任せていく。細かな指示を出して、報告を逐一求めるような“余白のない”方法では、修士・博士人材ならではのパフォーマンスを期待できないでしょう。いっそ、課題設定から任せてしまったほうがうまくいくこともあります。