工場見学で職人がヒーローになった話。写真はイメージです Photo:PIXTA

観光客が工場見学やワークショップなどを通じてものづくりの魅力を味わうツアーが増えている。観光がもたらす利益はお金だけではなく、職人自身が刺激を受けたり、地域に雇用や新事業を生み出すトリガーにもなるのだという。“本質的な地域創生”につながる、新しい「観光」のあり方とは?※本稿は、永谷亜矢子『観光“未”立国~ニッポンの現状~』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。

工場見学イベントによって
町工場の職人がヒーローに

「産業×観光」の組み合わせは、農業や漁業にとどまりません。我が国の工業もまた、地域の観光経済の柱となりうるポテンシャルを秘めています。

 大阪府内の各都市で開かれる「FactorISM(ファクトリズム)」は、オープンファクトリーと呼ばれる工場を公開するイベントです。1600トンの大型のプレス機を使用する鋳造では、鉄がドロドロと溶けて熱気と光に覆われるダイナミックな光景が見学でき、迫力満点。「SF映画みたい!」と人気を博しています。

 その中心会場である八尾市は、約3500もの中小の製造企業がひしめく産業の街。

 型枠や部品、ねじといった製造業の根幹をなす技術を持った企業が集まっているのですが、働き手の高齢化や後継者不足の問題が顕在化していくなかで、八尾の町はオープンファクトリーを開催することで、これまで一部の人しか来なかった工場に関心を持った観光客が国内外から来るようになり、工場の人たちは「今まで接することがなかった人々」とコミュニケーションをとる機会が生まれました。

 ここで、思わぬ化学反応が起きます。