観光が雇用や投資を呼び込む
新しいビジネスのトリガーに

 ファクトリズムやオープンファクトリーを通じて「地域に関心を持つ層が生まれる」ということは、そこで働いてみようかとか、なにかを一緒にやっていきたいという人を掘り起こすことにもつながります。これこそまさに、「関係人口」にしたい人たち。採用や投資を呼び込んだり、新しいビジネスが創出されるトリガーにもなりうるということです。これは人手不足に悩む地方において、なかなかのインパクトになるでしょう。

 オープンファクトリーはファクトリズムの他にも、福井県の越前・鯖江エリアで開かれる地元の漆器や包丁などの工場を公開する「RENEW(リニュー)」が海外からも人気です。5万人以上の来客者を数えるとともに、地場産業の活性化に寄与しています。

 あるいはウールの産地として知られる尾州(愛知県西部~岐阜県西濃地方)で開かれる「ひつじサミット」もにぎわいを見せており、生産者たちは組織の垣根を越えて「尾州全体を盛り上げよう」という機運に満ちています。

 地域に根付いた「産業×観光」の組み合わせをコンテンツ化することは、その地域に来てほしい人を呼び込む施策になるだけでなく、新たな雇用や投資、産業を呼び込む可能性ももたらします。加えて、そこで働く人たちの連帯感であったり知見をアップデートする機会にもなりえます。観光にはこんな“副次効果”もあるのです。

建築や民藝・伝統工芸が
有力な観光コンテンツに

 文化財もまた、観光と掛け合わせることで有力な観光コンテンツになりうる存在です。特に、建築や民藝・伝統工芸といった領域にポテンシャルを感じています。文化体験をすることで日本のイズムが伝わり、その体験価値は高く、「理解が深まる要素が詰まっている観光の在り方」だと思います。

 日本の建築が世界からも脚光を浴びつつある中で、私は建築ツーリズムに注目しています。なぜ推しているかというと、そもそも手を入れずとも歴史を重ねた建築物が点在するエリアごと、優良な観光資源だからです。しかも、「なぜその年代にここに建てたのか」という時代背景や土地の文化を、鑑賞すると同時に学ばざるをえないからです。