日本能率協会の「当面する企業経営課題に関する調査―組織.人事編2023―」でも、ジョブ型の導入目的(複数回答)は、「役割・職務・成果を明確にし、それらに応じた処遇を実現するため」が74.6%と最も多く、次に「専門性の高い人材を育成.活用するため」「社員のキャリア自律意識を高めるため」が4割前後です。

管理職層の処遇の
矛盾を放置できない

 両調査とも、仕事と処遇との関係を見直すことが、ジョブ型人事制度導入の主目的であることを示しています。企業にとって、ジョブ型人事制度の導入とは、まずは「仕事に応じて給与を決めたい」、つまり、職務給を導入したいということなのです。

 たいていの企業において、仕事と処遇との関係で最も矛盾が目立つのが管理職層です。これまで、多くの日本企業は能力主義の等級制度(職能資格制度)を採用してきました。

 長く職能資格制度を運用していると、管理職層は、ごった煮状態になります。職能資格制度には等級別の定員枠がありません。

 たとえば、課長ポストがなくても、「課長が務まる能力」があれば課長相当の等級に昇格できます。本当に課長が務まる能力があればまだよいのですが、かつては「総合職は課長相当の等級までは昇格させてやりたい」という年功運用を行ってきた企業も珍しくありませんでした。一旦、昇格すると、原則として「職能資格に降格なし」です。

 こうして、課長相当の等級には公式組織の長としてのライン課長だけでなく、ポストに就いておらず専門職としても実力が少々怪しい人なども在級することになります。ライン課長、専門職、「どちらでもない人」のごった煮です。

 典型的な職能資格制度の給与制度は、等級が同じであればライン長であっても「どちらでもない人」でも基本給(職能給)の下限・上限は共通で、その範囲内で定期昇給があります。在級年数が長いと定期昇給が積み上がっていくので、年功で職能給の上限に近づいていきます。

 ちなみに、年功の「年」を「年」齢のことだと思っている人がいますが、そうではなく、勤続「年」数です。そして、「功」績を見るので、昇給や昇進昇格が一律というわけでもありません。