人事制度や給与制度には、大別して「ヒト」基準のものと「仕事」基準のものがあります。「ヒト」基準とは、その「ヒト」の能力や経歴などに応じて等級や給与を決めるやり方です。職能等級や職能給、年齢給などは「ヒト」基準です。家族手当も、その人の扶養家族数に応じて支払うので「ヒト」基準です。
一方、「仕事」基準は、「人事課長は7等級で月給70万円」というように、誰が担当するかとは関係なく、「仕事」そのものに応じて等級や給与を決めるやり方です。職務等級や職務給、役職手当などは「仕事」基準です。職務を大括りで捉える役割等級や役割給も同様です。
ジョブ型や職務給の導入の背景に
日本企業ならではの事情が
なぜ今、「ジョブ型人事制度」や「職務給」に関心を持つ企業が多いのでしょうか。
少し人事に詳しい人に尋ねると、「ジョブ型や職務給って、欧米の仕組みですよね。人事もグローバルスタンダードに合わせなければ通用しない時代だからじゃないんですか」という答えが返ってきそうです。
確かに、報道で取り上げられる企業事例のほとんどは大規模にグローバル展開を行っています。その意味では、この回答も外れではないのですが、日本におけるジョブ型や職務給の導入はグローバル企業に限った傾向ではありません。
むしろ、日本企業の固有事情がジョブ型や職務給の導入を後押ししている面があります。ジョブ型や職務給が注目される背景は、「人件費の合理性」向上に対するニーズと「タレントマネジメント」推進上のニーズに大別できます【図表9】。

企業がジョブ型人事制度の導入を進めている主な目的の1つは、「人件費の合理性」を高めることです。
パーソル総合研究所の「ジョブ型人事制度に関する企業実態調査」(2021年)ではジョブ型人事制度の導入目的(複数回答)として、「従業員の成果に合わせて処遇の差をつけたい」が65.7%と最多で、「戦略的な人材ポジションの採用力を強化したい」(55.9%)、「従業員のスキル.能力の専門性を高めたい」(52.1%)がそれに続きます。