それでも、定期昇給制度があれば、その等級の給与レンジの上限までは何がしか昇給していきますし、「職能資格に降格なし」の運用で一般職層の最上位の等級に張り付いたままというのは、よくあるパターンです。それで管理職手前の等級は肥大化していくのです。

 大量採用の「バブル入社世代」は現在おおむね50代半ばから60歳前後で、定年後も65歳まで、あるいは70歳までの勤務を希望する人が多いです。70歳までの雇用延長が要請される中、企業が高止まりしている中高年層の給与を何とかしたいと考えても不思議はありません。

 ここで、中高年層の給与カーブを確認してみましょう。労務行政研究所の「高齢者の処遇に関するアンケート」(2024年)によると、定年まで昇給する企業が33.0%で最多、一定年齢以降「鈍化」が24.1%、「横ばい」が22.2%です。

定年後も同じ仕事を担当し
給与は3割減

 一定年齢で給与カーブが屈折する場合、その年齢は「55歳」が最多で52.3%です。定年後の給与は6割の企業が「減額横ばい」になり、60歳直前の年収に対する比率は、「60%台」が31.7%で最も多く、続いて「70%台」が26.7%です。

 つまり、「ふつうの会社員」は、55歳で昇給額が少なくなることはあるものの、過半数の人は定年まで何がしか給与が上がり続けます。55歳で給与が横ばいになる人も合わせると、8割の人は定年時が給与のピークになります。

 そして、定年を迎えると給与が3~4割減額されて再雇用になり、そのままの金額で65歳まで勤務するかたちです。

 企業視点で見ると、バブル入社世代は定年に差し掛かりつつあり、定年を境に再雇用後の給与を減額するので、とりあえず人件費対策としては一定の効果がありますが、大きな課題が残っています。それは、年齢を持ち出さなければ説明できないという点です。

 一般社員層の中高年者の場合、「今できていることを継続させる。あえて異動させて強みを削ることはないと考えている」企業が多いため、定年後も同じ仕事を担当し続ける人が大半です。