ミドルが新人に仕事を教えるときに大切なことは、その仕事の意味が理解されるまで丁寧に伝えることです。殺伐とした職場は数値目標のインフレ状態であって、経営職や管理職から事業目的が明確に語られていません。目標に意味を加えた目的を情に訴えることができない経営職・管理職は、やはり失格。人は心で動くもの。
例えば電話応対。研修の座学やロールプレイで、受け答えのマナーから声のトーンまで詳細に教えたとしても、決して身につきません。姿が見えないゆえの恐ろしさを納得させた上で、電話も真剣勝負の自覚と責任を持たせることです。
そしてミドル自らも、電話応対の模範を示していかなければなりません。面倒くさそうな取り方や粗雑な受け答えをしているミドルが、したり顔で教えても、新人の腑(ふ)には落ちません。彼ら彼女らの「わかりました」は半信半疑の表れなのかもしれませんよ。
新人の直接の上司であるミドルが「Z世代は……」だとか「最近の若者は……」とか、一方的に評価を下して指導放棄することは厳禁です。ただ「頑張れ」だけでは、お粗末極まりなし。指導とは忍耐、そして気配り、目配り。思いやりの情もお忘れなく。いやしくも人を育てる立場に身を置くならば、自分の時間が「赤字」になる、足りなくなるとの覚悟を持たざるをえないでしょう。
管理職の「忙しごっこ」は禁止
今こそ真の働き方改革を
大学教員時代に、ある地元企業の管理職の方と昼食を共にしたときのこと。若手社員の教育に苦労されているという愚痴を聞いたのですが、氏の失敗談は次のような内容でした。
新卒の女性の部下に「この案件やってくれるかな」と尋ねると、「できると思います」との返事。しかしながら、1週間たっても報告をよこさないので、「あの件はどうなっているの」と催促すると、「やっぱり無理でした」との答えが返ってきたそうです。氏は一瞬耳を疑い、「できないなら、すぐに相談しないと駄目だろう」と、少し強い口調で注意したとのことでした。