「忙しごっこ」が好きな上司が、気づかないまま部下に軽蔑されている理由写真はイメージです Photo:PIXTA

新人指導に苦慮しているビジネスパーソンは多い。愛情を持って指導しているつもりが、すぐに新人が退職するといったケースもあるだろう。上司が新人に仕事を教えるときに大切なこととは。※本稿は、平岡祥孝『組織と仲間をこわす人、乱す人、活かす人 仕事は必ず誰かが見ている』(PHP新書)の一部を抜粋・編集したものです。

自分の時間が「赤字」になる
新人指導に持つべき覚悟

 6月ともなると、新入社員・職員の職場内訓練(OJT)も本格化する時期になります。

 このOJTには理と情が必要です。もちろん仕事には合理性や効率性が求められます。加えて、仕事をチームワークで行うならば、情は親近感や仲間意識のベースとして必要です。さらに言えば、情は信頼に基づく人的ネットワーク構築の原点です。私なりに、仕事哲学というものを解釈するならば、ロゴス(論理)とパトス(情熱)とエトス(精神)の三位一体ではないかと。

 昨今は情が薄れた職場が多く、人間関係も希薄化していると感じるのは私だけでしょうか。IT化の進展だけが原因ではないともいえません。過剰な成果主義が砂漠化を促しているとも感じられます。

 形式化された無機的なOJTや、放任されたままの粗雑なOJTでは、「育てる経営」の実現など不可能でしょう。新人さんは早く仕事を覚えたい、早く職場に溶け込みたいと、新しい環境に過剰なまでに適応しようとします。その反動がOJTで表れないか。

「一日も早くこれができるように」「最低これだけは覚えてほしい」「今年はこの資格を取るように」等々、達成目標のオンパレード。けれども、新人に目標だけ与えても、プレッシャーで窒息してしまいます。