白けているとか殺伐としているとか、社会を批判することは簡単です。ですが、社会の風潮がどうであれ、力強く生き抜いていくためにも、ぶれない自分軸を確立するためにも、夢こそ必要ではないでしょうか。確かドイツの劇作家エルンスト・トラーだったかと思いますが、「夢見る力がない者は生きる力を持たない」と言っていました。
多少なりともほろ苦い職業人生を送ってきた私としては、若者が働くことに夢や希望を持ってもらいたいと切に願っています。ただし、ロマンチストこそリアリスト。すべては厳しい現実を直視することから始まります。自己の都合で現実を見たいように見てはいけません。若者には素直な心が必要です。
とはいえ、人生の充実の程度は結局のところ、ミドル時代の生き方に大きく左右されるのではないでしょうか。仕事に向かう姿勢や仕事に対する取り組み方に、ミドル各人の価値観や人生観が投影されるものです。
それゆえ熱きミドルの働き方こそ、若者に夢と希望を与えるギフトだと思います。
「もう先が見えてるさ」「俺のポストはここまでだから」「やってもやらなくても評価は同じだよ」等々、自己停滞に陥ると輝きを失います。
そして、その次に待ち受けているのは惰性や怠惰の桃源郷です。これがなかなか心地よく、仕事への新たな挑戦意欲や自己変革への向上心は、雲散霧消してしまいます。保身に身をやつすミドルほど、醜い姿はありません。

「あんな課長にはなりたくないよね」「部長は所詮、わが身がかわいいだけだから」と、部下や後輩から軽蔑されてしまいます。新人は仕事自体に失望するだけでなく、ミドルの仕事振りを見て失望することも少なからずあるでしょう。
ドイツの文豪ゲーテは「絶えず努力する者は救われる」(『ファウスト』)と語りました。
「絶えず努力する者の夢は必ず実現すること」を若者に信じてもらいたい。夢が破れたならば、次の夢を持つ。その繰り返しを通して真の夢に近づいていくのではないでしょうか。ミドルがひたむきに努力する姿を見せていきましょうよ。「ミドルよ、大志を抱け」です。