山口 過去の戦争を見ても、ロジスティクスが明暗を分けたケースは非常に多い。戦争や軍事作戦には多くの不確定要素が伴うので、ロジスティクス能力はいくらあっても不足します。
即応力の質の面を
測るのは極めて難しい
山口 次に重要なのは、教育訓練です。これは技能と練度を高めるとともに、戦略、作戦、戦術との整合性を確立する上でも欠かせません。また、近年はトップダウンの中央集権型から、最高司令官が核心的な計画を指揮し、隷下部隊は率先して最適な方法で遂行すること(centralized command and control,decentralized execution:集権的指揮統制、分散型実行)が合理的と考えられるようになりました。
この自律分散型のモデルをうまく機能させるには、隷下部隊と構成員には戦略・作戦・戦術的なリテラシーとともに、自らプランA、プランB、プランCを考え、判断して実行する能力が求められます。これは民間企業における課題と共通します。時には自分で考え、自分で対処することが重要なのです。
小泉 いわゆるISR(情報・監視・偵察)は、運用即応力ですか、構造即応力ですか?
山口 両方にまたがっています。レーダーやセンサー、ネットワークやコンピューターなどのハードウエアは構造即応力で、ハードウエアを動かす能力は運用即応力に分類できます。
小泉 運用即応力はどうやって測るのですか?
山口 運用即応力を正確に測るのはなかなか難しい。教育訓練の質やロジスティクスをどう測ればいいのか。もちろん測れるものもあります。例えば、A地点からB地点まである重さのものを運ぶのにどれだけ時間がかかり、何台のトラックや何リットルの燃料が必要だとか、またはある作戦を実行するには、どれくらいの食料や燃料が必要で、何時間ほどの訓練が必要だとか。そういうものはある程度測れますが、質の面を測るのは極めて難しい。
ロシアがウクライナ侵攻で
苦戦している要因
山口 今までの戦争で、ロジスティクスがダメだったから負けた、あるいは苦しんだというケースが多々あります。ロシアがウクライナ侵攻で苦戦しているのも、ロジスティクスが1つの大きな要因ですし、第2次世界大戦の日本やドイツもそうでした。