小泉 平和安全法制で、日本政府はこの交代を「切れ目のない対応」という言葉で説明しました。ここから先は武力攻撃と明確化することによって、切れ目なく海上保安庁から海上自衛隊へ移管させるという説明でした。
山口 相手は、警察権と自衛権の間の微妙なところを狙ってきます。例えば、中国海警局が、尖閣諸島周辺の日本領海に押し寄せ、何もせずに留まっている。そこから少し離れたところには中国海軍が待機している。この状況に日本はどう対処すべきなのか。
小泉 領海に侵入してきてじっとしている船をどう扱うべきなのか。それは法のレベルではなく、現場の戦術的な話ではないでしょうか。
山口 もちろん、現場の状況把握と判断によるところもあります。グレーゾーン事態の定義は広く、グラデーションがあります。例えば、武装した漁民が上陸した場合であれば、警察が対処する治安問題です。
しかし、相手軍が領海・領空侵犯してきたり、自衛隊機や艦艇に異常接近してきた場合は、防衛の問題となります。領海侵入してじっとしているようなケースは相当曖昧ですが、相手が武力行使に移る可能性があるのならば、自衛権発動の準備をする必要があります。
海上自衛隊と海上保安庁の
連携強化を急げ
小泉 このように領海に厄介な船が現れた場合、海自と海保が連携して対応することになっています。そして現状ではできていなくて、やったほうがいいのは、海保と台湾、海保と韓国の連携です。台湾周辺のグレーゾーン事態に対処するには、友好国同士の連携が欠かせませんから。
たまたま台湾の海保と沖合で出会ったという形でもいいので、まずは訓練をしてみることだと思います。
現状、グレーゾーン事態についてのリアルタイム情報を多国間で共有できる態勢になっているかといえば、おそらくなっていないでしょう。
山口 海洋安全保障においては、海自と海保の双方が高い即応力を持ち、緊密に連携する必要があります。近年、中国海軍、海警局、民兵は着実に成長してきていますし、連携も強化されているので、海自と海保の負担が増えていきます。この脅威に効率的に対処するには、海自と海保の連携が何よりも重要です。2023年4月に、有事に防衛大臣が海保を統制する際の要領が策定されました。ただ、これはあくまで通過点であって、肝心なのは今後どのように連携を強化し、役割分担を定めていくかです。