「負け組ランドセル」と揶揄されても
「ウバック」を背負続けるワケ

 ウーバー配達員の仕事は、飲食店で商品を受け取り、お客様に渡すだけ。単純かつ簡単な仕事のため、身体的疲労はあるが、脳疲労はゼロ。理不尽な上司や取引先の顔色を伺うこともないし、納期や営業目標に追われる心配もない。

 おかげで、ストレスフルな会社員時代と比べると、圧倒的にストレスフリーな職場環境となっている。

 好きな時間に働き、好きな時間に休むことができる点も、ウーバーの仕事が楽に感じる理由の1つだ。体調不良や気乗りしない日に、無理して働かなくていい。時間の縛りがないので、毎朝アラームをセットする必要もない。

 また、ブルーカラーの仕事は運動代わりになり、純粋に気持ちいい。会社員時代と比べて、心身の健康状態はすこぶる良くなった。

 ウーバー配達員になる前、僕は運送会社のサラリーマンとして働いていた。雇用条件は、年収が約500万円。年間休日110日+有給。毎月の平均残業時間は40~50時間。従業員には会社携帯が支給されており、勤務時間外に電話が鳴らない日は珍しい。朝の5時頃にドライバーから電話がくるのも日常茶飯事だった。

 当時の僕は「年収400万円でいいから週休3日にしてほしい」「毎月5万払うから会社携帯を返納。サービス残業を撲滅したい」と本気で願っていた。お金持ちではなく、時間持ちに強い憧れがあったのだ。

 会社を離職し、四角いバッグ(通称、ウバッグ。一部の心無い人からは「負け組ランドセル」と揶揄されている)を背負うようになってから、僕は喉から手が出るほど欲しかった「時間という資産」を手に入れた。

 誰もが羨むような大企業に勤める、地元の友人たちと飲みに行く際、彼らからは嫌味でもお世辞でもなく、「佐藤はいいよな。時間がたくさんあって」「たしかにお金は大切だけどさ、時間はもっと大切だと思うんだよね」などなど、逆に羨ましがられることがある。

 とはいえウーバーの仕事は、いつまでもできる仕事ではない。