ころころ意見が変わり、発言の責任を取らない風見鶏

 風見鶏上司の行動には、一定のパターンがある。

 まず、自分の意見が変わっても、そもそも本人にその自覚がほとんどない。状況に応じて言うことを変え、矛盾を指摘されても「置かれた環境が違う」とかわす。

 次に、彼らは上にも下にも調子を合わせる。部下には「面白い発想だね」と迎合しておきながら、その裏で、上司には「やはり慎重に進めるべきですね」と平気で手のひら返しをする。

 意思決定の場面でいろんな人を巻き込むことで、責任の所在を組織全体に分散させるのも彼らの得意技だ。そうすることで、どんな問題が起きても、“私の独断ではない”という逃げ道が用意されていることになる。

 とはいえ、風見鶏上司にも肯定的な側面もある。例えば、組織内の衝突を避ける力は一級品であり、人間関係を穏やかに保つことができる。また、組織の空気を読む力に優れており、社内政治に巻き込まれることなく中立的なポジションを維持する能力も持つ。

 さらに、ハラスメントリスクが極めて低い(最近はハラスメント傾向のある人は怖くて出世させられない)。こうした特性ゆえに、風見鶏上司は問題の少ない中間管理職として重宝されることがある。

業績重視の企業でも目標設定や成果のコントロールが巧み

 近年、企業が業績志向を強めている中でも、風見鶏上司は世の中の変化にうまく適応しているという点は注目に値する。彼らは、成果を出したプロジェクトには後から関与し、私が支えていたと控えめに主張する一方で、失敗した案件についてはいつの間にか当事者の立場ではなくなっている。

 さらに、ここが重要なのだが、目標設定では、高すぎず低すぎない「安全圏に落とし込む術」に長けている。目標の実行においては、上層部に対しては厳しそうな見通しを伝えながら、最終的には(余裕で)目標を達成し、あたかも頑張って大きな成果をあげたかのような錯覚を持たせる。部下には「君の頑張りはちゃんと見ているよ」と心理的安全性を保証するかのような発言をして信頼を獲得する。

 このように、一般的に風見鶏上司は、数字や成果といった形式的な評価軸を巧みに利用し、組織内での地位を確保している。先を見る能力、周囲への見せ方(魅せ方)、個々の人物との的確な関係の構築力など、そこだけを見ると、なかなかのビジネスセンスと言える。