風見鶏には風見鶏にふさわしい役割を
そして何より、企業文化そのものを問い直さなければならない。波風を立てない人が優秀だという空気がある限り、風見鶏は決していなくならない。パワハラ的言動にならぬことを前提に健全な摩擦を歓迎し、多様な意見を尊重し、「言うべきことを言った人間」が評価される文化を築くべきである。そのためには、会議やプロジェクト運営の仕組みそのものを見直し、形式的な合意ではなく、実質的な対話を促す環境づくりが求められる。
しかし、残念ながら、そうはいってもハラスメント全盛の時代である。リスクを避けるため、風見鶏上司はこれからも増え続けるだろう。よって、風見鶏上司には、高望みせず、せめて会社の方向性や戦略をしっかりと理解し、その方針に沿って、組織や部下を適切な方向へと導く“風向きの調整役”になることを期待しよう。
もともと風を読む力があるのだ。それくらいはできるだろう。決して高望みをしてはいけない(ご存じのように、“過大な要求”は、パワハラ6類型の一つである)。
それにしても、会社でのコミュニケーションが難しい時代になった。ハラスメント防止法の制定は社会に大きなポジティブな影響をもたらしたと思う。しかしながら、副作用は大きく混乱は続いている。そして、まだしばらく続くだろう。
(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)