そして、もう1つ重要な視点が、高卒の時点で難関大学へ行ける学力を築くのに、そもそも親の経済力が大きく影響するということだ。
貧しくても優秀な学生は一定数いるだろう。しかし、全体の傾向を見れば親の経済力の影響は確実に学力に現れる。
親の援助がなくても進学できるようにすることが重要なのはもちろん、学力形成における格差を是正すること、そもそも大学進学を選択肢として考えられるようにすることも必要だろう。
家が貧しいと、大学進学を選択肢として考えられなかったり、親から反対されたりすることもあるからだ。
児童養護施設出身者の
大学進学率は……
「大学全入時代」と言われるが、実際に大学に進むのは親の援助を受けられる人か、奨学金という名の借金をする人だ。
親の援助が受けられる人にとっては進学しようと思えば進学できる時代になった一方、親の援助が受けられない人は多額の借金をするか、アルバイト漬けになるか、その前に諦めるしかないのが現実だ。
全体の大学進学率は5割を超えたとはいえ、一方で児童養護施設出身者の大学進学率は1割強にとどまる。(注3)
実際に施設から進学した学生を取材すると、「大卒者の前例がない」「職員から高卒で働くよう言われる」という声が聞かれた。職員が高卒で就職するよう指導するのは、やはり奨学金とアルバイトですべて賄いながら卒業することが、非常に困難を伴うことであり、何かあれば生活が破綻する可能性があるからだ。
現状では生活保護を受給しながらの大学進学は認められていない。生活保護受給世帯の子どもが進学する場合、世帯分離(住民票を切り離し、家計を別にする)の手続きを取る必要がある。