虐待から逃げてきた場合など、親を頼れない学生が病気などでアルバイトが困難になった場合、一時的にでも受給できるようにという声が上がったが、2022年12月の厚生労働省の社会保障審議会では、「一般世帯にも奨学金やアルバイトなどで学費・生活費を賄っている学生もいる」などの理由で、大学生も生活保護を受給できるように制度を変更することは見送られた。(注4)
高等教育は
親の支援が前提?
大学生の生活保護受給に関しては反対の声も多かった。

反対の背景には、多くの学生がアルバイトをしているという理由があげられるが、学費や生活費の一部を親に負担してもらえる学生と、すべて自分で賄う必要がある学生とでは「アルバイト」の意味合いは全く異なるだろう。生活保護が難しいのなら、別枠で救済制度を作る必要があるのではないか。
新型コロナウイルスが蔓延した際、主なアルバイト先であるサービス業が打撃を受け、アルバイトができなくなり収入が途絶えた学生たちがいた。親の援助が受けられない学生は常に綱渡りの状況であり、最悪何かあれば退学せざるを得ない状況に置かれる。休学すればその期間は奨学金の支給がないため、休んでから立て直すということも難しい。
現状では、高等教育(少なくとも現役進学)は親の援助が受けられる人を前提としているように見える。高等教育を受けるのは貧困の連鎖を断ち切る機会となるはずが、かえって貧富の差を再生産する要因にすらなっているのではないか。