
ファクトリーオートメーション(FA)の巨人、ファナックが富士通、NTTコミュニケーションズとの合弁で立ち上げたDXプラットフォーム運営会社が今春、ひっそりと解散した。失敗の要因には、ファナック肝いりの自前プラットフォーム、FIELD systemの失速も絡んでいる。特集『製造業DX 破壊と創造 9兆円市場の行方』の#3では、二つの製造業向けDXプラットフォームの活用が低調になった理由を徹底分析するとともに、FA業界の巨人の蹉跌から、モノ売りからコト売りに転じる難しさを明らかにする。(ダイヤモンド編集部 井口慎太郎)
富士通など3社の合弁会社が4年で解散
その裏に、ファナックのDX戦略の低迷があった
富士通、ファナック、NTTコミュニケーションズの3社が共同出資したDX(デジタルトランスフォーメーション)プラットフォーム運営会社、DUCNETが今年1月末、ひっそりと解散した。工作機械を巡るDXを推進するため、2021年1月にデジタルソリューション、ファクトリーオートメーション(FA)、通信の各業界のキープレーヤーが手を携えて発足させた共同戦線だった。
主な顧客は工作機械メーカーや、そのユーザーだ。業界全体で共通化できる保守診断サービスを軸に、DXによる業務効率化を図るプラットフォームを提供。工作機械の稼働状況などの技術データを集約し、AIで分析することで業務効率化につなげることを主眼に置いていた。利用料は月額で1社当たり2万~3万円だった。
ところが、同社は発足から4年で解散となった。一体、何があったのか――。ダイヤモンド編集部は、2代続けてDUCNETに社長を送り込み、出資比率も40%と最も多い富士通に経緯を質問した。
すると、富士通はほか2社と調整した上で以下のように回答した。「DUCNETを設立以降、製造業向けにプラットフォームを立ち上げ、さまざまなお客さまにサービスを提供するなど一定の成果を出してきました。顧客ニーズの変化や多様化が加速する中、今回DUCNETを解散し、そこで培った知見や成果を各社の事業戦略の下発展させることが、製造業のDX推進により最適であると3社で判断しました」。
事業環境の変化に要因があるようだが、具体的な言及はない。しかし、ファナックのDX戦略と比較し、かつ両社のプラットフォーム活用が低調である理由を分析すると、上記の富士通の回答が意味するところが見えてくる。
本特集の#1『三菱電機が主導したDXコンソーシアム「エッジクロス」静かに終了…製造業DXプラットフォームは戦国時代へ!』でも触れたように、ファナックは自前のIoT(モノのインターネット)プラットフォーム、FIELD systemを17年に立ち上げている。FAの分野で圧倒的な存在感を誇る同社だが、時代の要請に応えて機器を売るだけでなく、デジタルソリューションに進出する方向にかじを切ったのだ。
そして、DUCNETはFIELD systemと親和性があり、ユーザー層を囲い込んでエコシステムを拡大、強化する狙いがあったのだ。次ページでは、ファナック幹部が語ったIoT事業の手応えをお伝えした上で、DUCNETが解散に至った真相を、同社関係者への取材を基に明らかにする。