製造業DX 破壊と創造 9兆円市場の行方#5Photo by Shintaro Iguchi

情報処理推進機構(IPA)は、指定高速情報処理用半導体への出資という新たな業務を担うことになる。念頭にあるのは次世代半導体の国産化を目指すラピダスだ。特集『製造業DX 破壊と創造 9兆円市場の行方』の#5では、IPAの齊藤裕理事長に出資について最新状況を尋ねた。インタビューの後半部分では、転換点にあるIPAが向かう方向も語ってもらった。(ダイヤモンド編集部 井口慎太郎)

金融スペシャリストを採用して投資機能を拡充
経営サポートの役割もIPAが担っていく

――改正情報処理促進法が成立しました。今後、IPAは指定高速情報処理用半導体への出資や現物出資、債務保証を担うことになります。これまでの業務と毛色が違いますが、どのように対応しますか。

 金融業務を分かっている人をそろえています。そこは心配ないと思います。ただ、われわれが投資機能を持つというのは確かにこれまでの事業と業態が違う。これからはAIを活用する時代です。IPAには従来デジタル基盤センターとデジタルアーキテクチャ・デザインセンターがありました。今後は研究開発、知的所有権(の活用)も想定して投資判断をしていきます。大きな転換点だと思います。

 まずは半導体の投資、融資。これを成功させるところに焦点を当てます。で、これは皆さん(メディア)がよく言われますが「経済産業省が関わると失敗するのではないか?」という懸念。過去の事例では、ガバナンスの部分で、民間事業者に(経産省が)任せる部分が多過ぎてブラックボックスになっていたのだと思います。お金の面だけじゃなくて、経営をどうするかという話だってきちんと眺めないといけない。

 われわれも“経営サポート”のイメージも見据えて、スタッフをそろえていこうとしています。デジタル社会をつくるのは誰なのかと。旗振り役が必要だ。それは政治家なのかもしれない。でも、旗振り役には後ろにちゃんとチームがいないとダメ。そのチームとして、IPAがありたいということです。

――新規で採用している人材は、金融業務の経験があるのですか。

 もちろん。既にスペシャリストを2人採用しています。

次ページでは、半導体メーカーなどの出資対象の経営にIPAや政府がどこまでコミットすべきかを齊藤理事長に語ってもらった。