総予測2025#67Photo:AFP=JIJI

かつて「中国銘柄」とされていた産業用ロボット大手に異変が起きている。ファナックと安川電機では、米国を中心とする米州大陸の売上高が5四半期連続で中国を上回っているのだ。新規導入の数では中国が圧倒的な規模であるにも関わらず、中国に代わる主戦場として米国を重視する傾向が強くなっているのはなぜななのか。特集『総予測2025』の本稿では、産業用ロボットの売り込み先が中国から米国にシフトしている理由を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 井口慎太郎)

最大市場としての存在感は健在
急増する中国メーカーのシェア

 リーマンショック以降に日系の産業用ロボットメーカーが注力してきた中国が依然として世界最大の市場であることは揺るがない。

 国際ロボット連盟が9月に公表した統計によると、2023年に出荷された産業用ロボット54万台の半数が中国で導入されている。

 新規導入の数では米国は日本に次ぐ3番目だ。中国市場が圧倒的な規模感を誇るのに、日系の産業用ロボットメーカーで米州大陸での売上高が最多となっている理由はどこにあるのだろうか。

 第一に中国メーカーの躍進がある。17年に22%にすぎなかった中国メーカーの中国でのシェアは年を経るごとに上昇し、23年には47%にまで達した。

 日系メーカーにとっての中国での逆風はそれにとどまらない。EV(電気自動車)関係の投資の縮小もロボットの需要減の要因となっている。政府の補助金などが下支えして一時的に需要が上向くことはあるものの、中長期の見通しは依然不透明な状況にある。

 長引く不動産不況で建設機械の需要も低迷し、油圧機器を手掛ける川崎重工業の業績に影を落としている。20年度に881億円だった中国での売上高は、23年度は半分以下の410億円に落ち込んだ。

 米国のトランプ次期大統領が掲げる関税率アップによって中国での設備投資はさらに下火になる恐れもある。

では、第二の理由は何か。それは、生産工程の自動化を追い風に、米国市場でロボット需要が膨らむ産業が存在するからだ。次ページでは、その産業について明らかにする。