「労働組合は、すべての働く者が結集できる組織でなければならないし、そうであってこそ、社会における存在意義も存在感も高まるのである」と指摘。
これに取り組まなければ、「限られた労働者のニーズにのみ対応した運動のみ展開していると見られる。時代遅れの組織となり、質・量ともに労働組合、労働運動の基盤が崩壊する。働く者がバラバラに孤立し、際限のない競争となり、常に不安と隣り合わせとなる。労働者は『分断され統治されて』しまう」と書いていた。
企業組合では対応できない産業構造の転換や社会変化に対応する必要があるとも記されていて、「企業別組合主義から脱却し、すべての働く者が結集できる新組織戦略を」とし、産業別組合、ナショナルセンターや地域組織の強化にむけて、人の配置や財政の配分を見直し、組織の役割分担を明確にすることを求めた。
ただ当時を知る関係者らによると、この報告書に対しては企業別組合の幹部を中心とした反発もあり、ここで訴えられた改革が十分に進まなかったとされる。
労働環境が大きく変化し
対応できていない面も
その10年後の2013年にでた一般社団法人生活経済政策研究所の機関紙の特集「労働組合に未来はあるか――連合評価委員会最終報告から10年」の中にも、「連合幹部、とりわけ多くの単産幹部(企業別組合)が激しく抵抗した。『企業別組合中心主義を否定するのは現実的ではない』『そんなことを書かれても、傘下の大手企業別組合を説得できない』というのである」といった反応も書かれている。
この連合評価委員会の最終報告から20年近く、連合は2022年、連合生活開発研究所(連合総研)とともに「労働組合の未来」研究会を立ち上げ、新たな報告書をまとめた。玄田有史・東京大学社会科学研究所教授を座長に、有識者らをまじえ、約2年かけて、労組が抱える課題と処方箋について議論を重ねた。
この報告書「労働組合の『未来』を創る――理解・共感・参加を広げる16のアプローチ――」が報告された記者会見で、連合総研の中村天江主幹研究員は、この連合評価委員会報告を検討したと説明した上で、「この報告は第三者があえて建設的批判を行うことで労働組合を鼓舞するアプローチだった。批判色が強い分、反発も少なからずあったと聞いている。だが、それだけ的を射ていた面があった」と語る。