すでに中国でのネットユーザーは5億人を突破している。スマートフォンも普及期を迎え、右肩上がりで保有者が増えている。若い世代を中心に、多くの中国人たちがオンラインで過ごす時間が長くなり、必然的にネットでカネを落とし始めた。本連載ではネット通販でいかに中国人消費者の心をつかみ、口コミを増やしていくかについて度々触れてきたが、一方でオンラインゲーム市場は、どのような状況なのだろうか。日本市場との違いはあるのだろうか。東京大学卒業後、日本の大手コンサルティング会社を経てDeNA中国事業に参画した任宜氏に、中国のオンラインゲーム市場について聞くとともに、DeNAの中国事業戦略について解説してもらった。
有料ゲームユーザーは2億人!
ゲームオタクだけの市場ではない
――中国ゲーム市場の概況について教えていただけますか?
中国のゲーム市場(約5000億円)は、日本(6000~7000億円程度)とほぼ同じ規模になってきています。中国には20~30代を中心に有料ゲームユーザーが2億人もいて、決してゲームオタクだけの市場ではないのです。
携帯ゲームのシェアが多い日本に対して、PCゲームがほとんどを占めているのが、中国の特徴でしょう。日本のように5分、10分の隙間時間にスマホゲームで遊ぶというよりは、PCの前にまとまった時間座ってRPG(ロールプレイングゲーム)などで遊ぶユーザーが多いのが現状です。国営企業の社員の中には、勤務時間中もPCゲームをする人もいると聞いています(笑)。
購入したゲームを楽しんでもらう買取型モデルが多い日本に対して、ゲームが簡単にコピーされ無料で配られてしまう中国では、ゲーム利用中の課金で収益を上げるモデルが主流です。DeNA中国もアイテム課金モデルでスマホゲーム事業を進めています。現在DeNA中国では、約70タイトルのゲームを展開しています。
――中国と日本では、ネットインフラも違うようですね。
中国のネットにおけるデータ通信の速度は日本と比べるとかなり遅いです。有線ネットは、光の導入も始まりスピードが改善されていますが、モバイルは遅い状況が続いています。
モバイルの3Gのシェアが半分もない状況なので、トラフィック量の多いゲームは成立しません。モバイルの通信速度だけでなく、データ通信費用も日本とは違います。中国では日本のようにパケ放題(定額制データ通信契約)がないので、下手をすると“パケ死”(携帯電話のデータ通信料金が高額となり、支払い不能となること)してしまいます。
日本やアメリカでは、サーバーとの頻繁な通信を必要とするゲームが主流で、クラウドゲーミング(サーバー上でゲームを動かし、ユーザーはクラウドを通じて、音と映像を端末で受け取ることでゲームがプレイできる仕組み)の議論も盛んですが、中国ではネットインフラが整っていないので、できるだけデータ通信量を減らす設計でゲームを制作しないと成り立たないのです。