設備やシステムを徹底的に合理化し、精緻に原価計算した上で、従業員全員にしかるべき給与を支払って、それでもなお十分な利潤が残る優れたビジネスモデルを構築している。何度も株主が変わり、経営者が変わっても運営できるビジネスモデルとなっている。それがカリスマ経営者による“宇宙をへこませる”理髪ビジネスであったならば、赤字の垂れ流しで終わっていたであろう。QBハウスが未来永劫続くかどうかはわからないが、固定化された理髪ビジネスに、結果として鉄杭を打ち込んだことは事実であろう。
スモールビジネスの成功は
「マイルドヤンキー」に学べ
最近では、巨大な事業を目指すよりも成功確率が高く、安定性もあるという理由で、事業規模や資金規模の小さいいわゆる「スモールビジネス」を目指すケースが増えている。小規模で堅実な事業を目指すのは、B(経営者)としてのひとつの道であるだろう。
日本の「マイルドヤンキー」と呼ばれる経営者たちも、スモールビジネスに似た立ち位置にある。投資家の藤野英人が著書『ヤンキーの虎 新・ジモト経済の支配者たち』(東洋経済新報社)の中で取り上げている、東京に憧れを抱かず、地元で経済的な基盤を確保して成功を謳歌しているような経営者のことである。
スティーブ・ジョブズのような地位を目指して起業するのはリスクが高く、成功できるのもごく一部の限られた人だけであるが、一方では、マイルドヤンキーのように、自分が育った地元で、自分にやれることをやって成功している経営者が数多く存在する。こうした経営者を目指す方が、スティーブ・ジョブズを目指すより現実的である。
スティーブ・ジョブズを目指してはいけない、さらなる理由としては、経営者のカリスマ性が強いほど、会社を売却することが困難になる点である。誰が経営を引き継いでも回していける形にしておかないと、企業価値はかえって下がってしまう。
資本主義ゲームで
投資家は「勝ち組」
起業したら、毎年、コツコツと利益を積み上げていき、企業価値をある程度まで高めてから、M&Aで会社を売却することもよいかもしれない。そうすれば、その会社から生み出される利益を何年分も上乗せして受け取ることができる。ただしこの場合、会社を売却できる状態にしておく必要がある。そうでなければ、いつまでも創業者が経営から離れることはできない。