期限が迫っていて焦るべきなのに
余裕のフリをしてしまうのはなぜ?

ヨウコさん(40代、デザイン制作会社勤務)のぼやき

 学生時代から、試験勉強はいつも一夜漬けでした。就職してからも、締め切り前夜には会社に泊まり込んで仕上げてきましたが、最近では体力的に無理がきかなくなってきました。

 この変化を感じた頃から「明日締め切りなのになぜか焦れないんだよなあ」とまるで他人事のような感覚に陥ってしまい、たびたび締め切りを超過しています。

 先延ばした挙句、締め切り前にも焦れない人は、頭の中で「なるべく現実を見ないようにしよう」「締め切りを過ぎてどうにもならなくなるストーリーは途中で打ち切ろう」と想像をストップさせています。これを「認知的回避」といいます。

 ヨウコさんは、「どうにかなるだろう」という過度に楽観的なストーリーだけを信じているか、締め切りの迫った仕事そのものについて考えるのをやめているのです。

 とはいえ、直感的にこのまま締め切りを迎えてしまうとまずい結果になることはわかっています。

 それゆえに漠然とした不安は抱えながら、それをごまかすために、たいていの人はスマホやゲームに夢中になるか、酔っ払ってごまかすか、寝て何も考えないようにしようとします。

解決策は先延ばしした結果を
最後まで想像すること

 締め切りが迫りながらも焦らない人には、カウンセリングでは、このまま手をつけず先延ばしをしたら最悪の場合、どんな結末になるのか、最後まで想像し切ってもらいます。

 今まで考えないようにしていた分、現状の認識がかなり甘くなっているはずです。苦痛を伴いますが、途中で止めないことが大事です。すると、やっと現状を把握することができ、「どうにかなるさ」が「このままだとどうにもならないな。やるしかない」と変化するはずです。

 ヨウコさんには、今日締め切りの書類について考えてもらいました。今日17時までに上司の決済をもらわなければ、明日の9時からの会議に間に合わない資料なのだそうです。

 ヨウコさんは言います。

「会議の直前に提出しても上司に謝ればなんとかなるから先延ばしにしてしまうんです」

 そこで、ヨウコさんには「このままぎりぎりでも焦らないで先延ばしにするやり方が続くと、どのような将来が待っているか」についてとことん想像してもらいました。