「次に災害が起きたとき、“戻れなかった町”の前例があると、人々は『どうせ、もう戻れない』と考えてしまう。特に若い世代はその空気を敏感に察して、より早く別の場所に移動してしまう。その連鎖が続けば、復興どころか、地域の衰退を加速させることになるんです」

 彼が例に出したのは、ゲーム『ファイナルファンタジー14』の復活劇。かつて大失敗とまで言われたタイトルを、ゲームクリエイターの吉田直樹氏が見事に立て直し、今では世界的な成功作となった。

「ブランドの信頼を回復しなければ、誰も次のタイトルを買わなくなる。地方も同じで、『どうせ地方は復興できない』という印象を与えたら、それが未来の投資や居住意欲を奪う。だからこそ、“ちゃんと戻れる町”の実例を、いま能登でつくる必要があるんです」

YOSHIKI、ジブリ鈴木敏夫、益若つばさ…
参加は「即決」ゆるくも熱いチームの舞台裏

「実は、知り合いが少ないんですよ(笑)」と話すひろゆき氏。能登復興支援サブスクの発足にあたり、YOSHIKIさん、鈴木敏夫さん、北川悦吏子さん、ダルビッシュ有さん、成田悠輔さん、益若つばささん、HIKAKINさんなど、ジャンルを超えた多数の著名人に声をかけた。とはいえ、特別なキャスティング戦略があったわけではない。

あの「ひろゆき」が能登の震災復興としてサブスクビジネスを展開するワケ「能登復興支援サブスク」サービス発表会

「僕が個人的に連絡を取れる人に、シンプルに『こういうことをやろうと思ってるんだけど、どう?』ってメッセージを送っただけなんです」

 驚くべきはその反応の速さだ。「いいよ」「やろう」と即答する人がほとんどだったという。形式的な承認プロセスも、打ち合わせの長い時間もなかった。

「もちろん、試食してもらって意見を聞くとか、そういう流れはありますよ。でも中には、食べたっぽいのに感想が来ない人もいて(笑)。まあ、そのくらいゆるい。でも、それくらいの距離感がちょうどいいんですよね」

 それでもプロジェクト自体に対する思いは本物だ。彼らは支援の“主役”になろうとせず、ただ現場を後押しする存在として動いている。派手さではなく、自然体で連携する、ゆるくも熱いチーム。プロジェクトの柔軟さと信頼感は、こうした空気から生まれている。