「真夏にビーチで日光浴すれば血中のビタミンD(25ビタミンD)レベルは上がります。でも、高カルシウム血症になったりはしません。血中のビタミンD自体にはカルシウムの吸収作用がないからです。そこから作られる活性型ビタミンDはごく微量で、しかもその量は副甲状腺ホルモンによって厳密にコントロールされているので、血中のビタミンDレベルが相当高くても、活性型ビタミンDのレベルもカルシウムの値も正常範囲に保たれるのです」

 こういった特性もまた、ビタミンDのビタミンらしからぬ性質と言える。

年間120万人の生命を救う
がんの死亡率を減らす効果

 近年、ビタミンDサプリには、骨を強くする以外にも「免疫力を高める」「心筋梗塞、糖尿病、妊娠高血圧症候群等を予防する」など、画期的な効果があることが次々と報告されているが、今最も注目したいのは、「がんで亡くなる人を減らす」効果だ。

 浦島氏も参加した国際共同研究によって、「毎日ビタミンDのサプリを摂取していると、がんの種類に関係なくすべてのがんの死亡率を12%減じ得る」ことが証明されたのである。世界中でがんが原因で亡くなる人が約1000万人だとすると、単純計算で年間120万人の命を救える計算だ。

 どんな外科の名医でも、これだけの人を救うことはできない。

 一体どういう仕組みなのか。

 細胞には、車で言えばアクセルのような「がん遺伝子」とブレーキにあたる「がん抑制遺伝子」があり、そのどちらかが壊れると、細胞増殖の暴走が始まり“がん”になる。数あるがん抑制遺伝子の中でも、一番壊れやすいのが「P53がん抑制遺伝子」で、がん全体の4~5割があてはまる。しかも、P53が壊れているタイプのがんは悪性度が高く、亡くなる確率が高いこともわかっている。