
骨を丈夫にするだけではない
日本に足りない「ビタミンD」の効果
飽食の時代、栄養を摂り過ぎることはあっても、よもや足りてないはずがないと、大半の人は思っているのでは。だがそれは間違いだ。
日本人の多くは栄養素の摂取量が不足、また過剰であることが、さまざまな調査から明らかになっている。カロリーや塩分は必要以上に摂取している反面、タンパク質、食物繊維、カリウム、カルシウム等々、大切な栄養素は足りていないのである。
なかでも注目されているのは「ビタミンD」だ。
2023年には、「日本人の98%は足りていない」という調査結果が発表され、話題になった。「ビタミンDと言えば骨を丈夫にする栄養素」くらいの認識しかないと、事の重大性はなかなかわからないだろう。
なにせビタミンDには、骨を丈夫にするだけではない、超高額な処方薬をも凌駕するすごい効能がある。足りない状態を放置するのは、人生にとっての大損失なのだ。
だが一方で、“ビタミンの定義”から外れている「謎」な面があるため、「医師さえも、間違った知識を患者さんに伝えているケースが珍しくない」と嘆くのは、ビタミンD研究の第一人者である浦島充佳氏(東京慈恵会医科大学教授)だ。詳しく見て行こう。
まずは「ビタミン」の基礎知識から。そもそもビタミンとは、「(1)人間が生きていく上で不可欠な栄養素」のうち、体にとっての必要量は微量ながら、「(2)体内で合成することができない、もしくは必要量が合成できないため、食品から摂取しなくてはならない栄養素」を指す。つまり、食べ物であれサプリメントであれ「口から摂る」栄養が、ビタミンなのである。
ところがビタミンDに限っては、食事として口から摂取しているのはわずか1~2割程度に過ぎず、必要量の8~9割は日光(紫外線)にあたることによって皮膚の下で合成される。その上、ビタミンDを多く含む食品も非常に限定されているため、現実問題として、十分な量を食品から補うのは困難だ。