ところが、2023年7月1日施行の改正道路交通法により、電動KBのうち最高速度20km以下のものについては「特定小型原動機付自転車」というカテゴリが新設され、これらは16歳以上の者であれば運転免許なしで公道(車道・自転車道)を走ることができるようになりました(歩道や路側帯は走れません)。
実証実験が行われたのは
公道ではなく大学の構内
多くの国民にとっては唐突感があったこの法改正。経緯を大まかに見ると、はじめに電動KBの普及を意図する事業者がおり、それら事業者が複数集まって「マイクロモビリティ推進協議会」という業界団体を立ち上げました。
そして、経済産業省への提言や規制のサンドボックス制度を利用した実証実験、新事業特例制度による公道での事業実施、自民党MaaS議連(編集部注:都市部の交通渋滞や地方部の公共交通の縮小といった課題解決を目指し、新しいモビリティサービスの普及を促進している自民党が設立した議員連盟)への働きかけ等のロビー活動を経て、一気に法改正の流れを作ったというものです。
この辺りの事業者と国会議員の距離感や呼吸がどのようなものかは分かりませんが、おそらくマイクロモビリティの社会的意義と重要性に心を打たれた多くの議員の方が、純粋な使命感から法改正に向けた働きかけを精力的に行っていったのだろうと推察します。
規制のサンドボックス制度(新技術等実証制度)は、現行の法規制の下では実施困難な新技術を用いたビジネスモデルの社会実装に向けて、規制官庁の認定を受けた上で実証実験を行う仕組みで、2018年6月にできた比較的新しい制度です。
電動KBのケースでは、公道ではない国立大学の構内などで実証実験が行われたようです。
この制度は、内閣官房の資料でも「まずやってみる!」を謳い文句とし、事業化や規制の見直しを目標としているように、それ自体、新技術・新事業の社会実装のために規制緩和を行うことをかなり強く意識した制度であるという印象を受けます。
法改正にはそれを支える理由が必要ですが、ロビー活動では、マイクロモビリティの規制緩和の遅れによる海外事業者との競争力の低下回避、人口減少・高齢化・公共交通維持困難の下での代替的移動手段としての活用、あるいは大都市圏でのラストワンマイルの移動手段としての活用、安全であり環境負荷も小さいことなどがアピールされていたようです。