本来、法の合憲性の有無を判定する際に問題とされるものですが、新法の制定や改正の場面でもそれを支える立法事実があるのかどうかは当然問題となります。
今回のように、既にある規制を緩和する改正については、それをしても問題がないか、新たな問題を生むことにならないかという点が十分に検討されなければならなかったはずです。
電動KBは、2023年7月の改正法施行とシェアリングサービス開始以後、若者を中心にチョイ乗り需要を喚起し、利用が進んでいるようです。
一方、SNS等で2人乗りや信号無視、飲酒運転の問題が指摘されることがあり、高齢者への当て逃げ事犯や頭部受傷による死亡事故発生の報道も記憶に新しいところです。
筆者個人としては、安全面での十分な議論がないまま事業化前提で道路交通法改正の動きが進み、社会に浸透しだしてからようやくその危険性や交通ルール無視の問題に人々が気づき始めたという印象を強く持っています。
そもそも「特定小型原動機付自転車」は、原動機の有無や装備・通行方法などは従来の原動機付自転車に近い反面、ヘルメットも運転免許も不要という点ではむしろ自転車に近いという、実に中途半端な位置づけをもって産声を上げました。
「ヘルメット着用任意」が
最初から念頭に
そして、法改正とシェアリングサービス開始が急な流れで進んだことも相まって、消費者には、その使用方法や法規制に関する十分な知識・意識が定着しないまま、街中に普及し始めているように感じます。
新しい「車両」のカテゴリを設ける段階で、ヘルメット着用を義務づけることもできたわけですが、議連の勉強会や実証実験の報告結果などを見るとむしろ最初から「ヘルメット着用任意」が念頭に置かれていたことがうかがわれます。
もちろん、法律による規制は事後規制が基本ですから、これまで危険運転致死傷罪や妨害運転罪の新設、飲酒運転の基準厳格化・厳罰化がなされてきたように、今後「特定小型原動機付自転車」についても、悪質・危険な運転行為をきっかけに規制強化がなされるかもしれません。