同書では「喜びを創造していく」と謳っていながら、苗場の国道沿いに残された元ホテルの残骸については、このまま他人事のように忘れ去るつもりなのだろうか。
これまでの湯沢町と言えば、とかく一般のリゾートマンションの「10万円」という販売価格ばかりがクローズアップされてきたが、実はこのように、そのすぐ真隣には、10万円でも売れないどころか、使えない、入れない、なのに固定資産税が発生し、手放すのすら困難になっている「負動産」が数多く存在しているのだ。
いずれも堅牢なコンクリート製の建造物であり、緊急に解体を要するほど崩落している建物はないため、湯沢町においてはこれまでに行政代執行などによる強制的な解体措置が取られたことはまだない。
県外在住の区分所有者が多くを占める投資物件を、公費によって解体するとなれば地元からは大きな反発が起こるはずだ。行政代執行は原則として所有者にその費用が請求されるが、区分所有者の全員がその支払い能力を有しているという保証はない。
区分所有者が当事者意識を欠くホテル
そもそもこんなものを売ってはならない
また、不適切な管理が行われていた建物を、満額回収できる保証もない事実上の「後払い」によって解体してしまえば、毎月、修繕積立金を徴収しているほかのリゾートマンションの管理組合に与える影響も無視できない。
このあたりのリスクについて湯沢町当局はどのように考えているのか。総務課に尋ねたところ、外壁落下などについて近隣からの通報があり、管理者に連絡して指導を行うなどの対応は取ったが、権利上の話となると私有地であるために介入が難しいのだという。それは聞く前からわかりきっていた回答であり、役場の対応を非難することはできない。
現在も収益物件として機能しているものもある「区分所有型ホテル」のビジネスモデルについて、僕が独断で結論を出せば、関係者からの非難は免れないかもしれない。