だが僕はこの苗場泉郷ホテルの取材中、「こんなものは売ってはならない」という思いを拭うことはできなかった。共同取材を依頼した、投資物件を専門に扱う楽待不動産投資新聞の編集者も、取材後にこの区分所有型ホテルの残骸について「こんなものを持つのは絶対に嫌だ」と吐露していた。

 当事者意識が欠けている所有者の建物が様々なリスクに晒されるのはやむを得ないとしても、区分所有型ホテルの場合、どう考えてもその仕組みには、当事者意識の欠落を誘発しかねない構造的な欠陥が内包されているとしか思えないからだ。

 販売のための宣伝手法も、また購入動機も、区分所有建物の販売手法としては安易すぎる印象があるし、ホテルの運営事業者は建物の処置について責任を負わず、逆に建物の区分所有者はホテルの運営に責任を負わないというのでは、それは区分所有法が目指す理念とは程遠いものだろう。