「こんなのあるか!」と怒るのは日本人と中国人と韓国人だけ、という状態でした(大げさに言う人なので、多少の誇張はありそうですが)。

 欧州のサービスは全くひどいものだ!と彼が杯を傾けながらそう語ると、一緒に飲んでいた人たちも、つられて自分の経験を話し始めました。

残業をやらない欧州では
15時以降のアポは厳禁

「パリで電車が止まったんだけど、車内アナウンスがあっただけ。遅延証明とか迂回(うかい)ルート案内とか、無料代替チケットとか、そんなもんなかった。文句を言うと、“運送約款に書いてあるだろ”って言われた。それ以上クレームをつけたら警察沙汰になりそうだった」

「私はベルギーのスーパーで、言葉がわからず右往左往していたら、いきなりビニールバッグを丸めて投げつけられました。『ビニール袋は有料だが、いるか』と聞いていたようで……。彼女は携帯電話片手にレジを打っていて、おしゃべりに夢中で面倒臭かったのでしょう」

 いやあ、どれもひどい話ですね。そういう私も、仕事柄、欧州に取材に行き、何度も驚いたことがありました。

 まず、銀行や役所の窓口。彼らは定時になると、人が並んでいても、平気でシャッターを下ろします。日本ではあり得ませんね。

 私は「雇用ジャーナリスト」として、あちらの職業訓練校や商工会議所などを訪ねることも多いのですが、そうした時、アポイントを取ってくれるコーディネーターから、必ずこう注意を受けます。

「向こうでは、残業はまずしないから、15時以降のアポは厳禁です。途中で退社時間が来たら帰ってしまいますから。それと、金曜は土日のことで頭が一杯なので、大方アポは取れません。木曜でも午後はもう上の空です。だから水曜、最悪でも木曜午前中までに訪問しましょう」

 ということで、私たちは木曜早朝着でそのまま取材、などということが何度もありました。職業訓練校も商工会議所も「公務(準公務)」なのに、この調子です。

それでも欧州の労働生産性は高い
日本こそが先進国の中の“異端”

 どれも、日本ではあり得ませんが、これが欧州の標準的な働き方です。先進国クラブと呼ばれるOECD(経済協力開発機構)加盟38カ国は、欧州国家が大半を占めるのだから、日本こそが先進国の中の“異端”と言えそうです。