15世紀に主流だったのは、古代ローマの学者クラウディオス・プトレマイオス(数学、天文学、占星学、音楽学、光学、地理学、地図製作学などで業績を残した)が、著書『アルマゲスト』で唱えた天体モデルです。

最も正確に惑星の動きを
描写した『アルマゲスト』

 ちなみにプトレマイオス以前の天動説では、地球を中心に同心円を描くように惑星が進む「同心天球モデル」が有力でした。

 しかし同心天球モデルには、ある欠点が存在しました。

 実際に地上から観測した惑星は、文字どおり、天球上をまるで惑うように行きつ戻りつしながら、複雑な軌道を描きます。一方、同心天球モデルは、どの惑星も一様に地球の周りを回るため、実際の惑う動きを再現できなかったのです。

 プトレマイオスが唱えたモデルは、惑星の主軌道に「周転円」(地球の周りをめぐる惑星が、その軌道上でさらに小さな円の上を回転するという考え方)や「離心円」(地球の周りをめぐる惑星らの回転中心を、地球からずらした位置に配置した)、「エカント」(惑星が等速で円運動するのではなく、離心円の中心を挟んで反対側に配置した「エカント点」から見て一定の速度で動くよう速度が増減する、という考え方。エカントそのものに「点」という意味がある)という概念を取り入れることで、「実際に見える惑星の軌道」を非常に高い精度で再現することに成功しました。

コペルニクス『天体の回転について』に編集者が「勝手に書き足した」一文とは?同書より転載

『アルマゲスト』が著されたのは150年頃。

 その後コペルニクスが現れるまでの1300年以上にわたって、プトレマイオスの宇宙観は、「最も正確に惑星の動きを描写する」モデルとして、不動の地位を誇っていたのです。