ルーツから見直す祇園祭のご利益

新型コロナ禍により、20年と21年の祇園祭の山鉾巡行は中止となり、稚児や禿は選ばれませんでした。1150余年の時をさかのぼった平安初期の869(貞観11)年にも、人々を苦しめ、死に至らしめる疫病が全国的に蔓延しています。このパンデミックを鎮めるため、宮中の庭園であった神泉苑に、当時の国の数と同じ66本の矛を立て、祇園社(八坂神社の旧称)から神輿を送った祇園御霊会(ぎおんごりょうえ)が祇園祭の起源です。
その規模は次第に大きくなり、応仁・文明の乱(1467~77年)で一時途絶えたものの、室町時代の1500(明応9)年に町衆により復興されてから現代まで大切に守り継がれています。その間、大火で山鉾が焼けたりもしましたが、21世紀に入って大船鉾と鷹山が復興したことで、17日の前祭と24日の後祭の山鉾巡行で合わせて34基が巡行しています。
文化財級の懸装品から「動く美術館」とも呼ばれる山鉾ですが、じっくり拝見するなら山鉾建て(前祭10日、後祭18日から)の組み立てる段階から見学して、動かない状態でじっくり観察するのもいいでしょう。巡業の4日前(前祭12~13日、後祭20~21日)には、巡行さながらに動かす山鉾曳き初めが行われます。一般人が曳くチャンスもあり、綱を曳くと、無病息災のご利益を授かるといわれています。また、宵山までの期間中は山鉾町で厄除けちまきなどを授かることもできます。
ところで、巡行の本来の趣旨は、山鉾の巡行によって疫病をもたらす疫神をはらい清めて、神幸祭で神様を八坂神社からお迎えし、また還幸祭で神社へお帰りいただくことにあります。1000年以上の時を経た今も、祇園祭を執り行うのは八坂神社。山や鉾が建ち並ぶ四条通を東へ直進すれば西楼門に突き当たるので、迷うことなくたどり着けます。
八坂神社といえば、この6月1日からお賽銭の“キャッシュレス”参拝が始まったことで話題を集めました。授与所にて1枚200円の専用の木札「参拝銭」をキャッシュレスで購入し、ご本殿に向かってお参りをするときに小銭ではなくこの参拝銭を賽銭箱に投げ入れるというもの。もちろん、これまで通り小銭でお参りすることもできますが、両替手数料を金融機関にたっぷり取られる時代に合わせた、斬新な試みですね。