祇園祭7月の京都は、夏の代名詞「祇園祭」で始まり終わる

2025年も早いもので、あと半月ほどで折り返します。7月の京都は、1日から31日まで「祇園祭」の熱気に包まれます。「動く美術館」とも称される絢爛豪華な山鉾をめでるのはもちろんのこと、疫病除けのご利益をたっぷりいただける八坂神社5つの神事を厳選しました。(らくたび、ダイヤモンド・ライフ編集部)

真夏の話題は「お稚児さん」から

 6月9日、京都も梅雨入りしたとみられると大阪管区気象台から発表がありました。昨年よりはだいぶ早めですが、平年よりも3日遅いとか。それに先立つ2日午後、「今年の祇園祭のお稚児さんが決定!」の速報が流れました。このニュースを聞くと、京都人の話題は、梅雨入りのことから「もうすぐ祇園祭ですね」に一足早く変わるのです。

 7月の祇園祭は5月の葵祭とは何かと対照的です。葵祭の斎王代は学生や社会人など大人の女性が選ばれます。一方、祇園祭の長刀鉾(なぎなたほこ)に搭乗する稚児と禿(かむろ)は小学生の男の子で、神の依り代としてご奉仕します。かつては長刀鉾町に限られていたようですが、今では広く京都市内から選ばれています。

 とはいえ、稚児や禿に選ばれるのはオーナー企業のご子息がほとんど。京菓子「鼓月」や「鍵善良房」、お茶の「福寿園」や漬物の「西利」、八坂神社の南にのれんを掲げる「祇園にしかわ」、そしてヤサカ観光バスといったおなじみの地元企業が並んでいます。斎王代と同様、父子や兄弟で稚児や禿となる例も少なからず見られます。

 今年のお稚児さんは同志社小学校の3年生で、ピアノ、水泳、体操、ラグビーなど7つの習い事をかけ持ちしているスーパーキッズですが、和装小物「久保商事」社長をつとめるお父さんも禿の経験者。父子で祇園祭にご奉仕しています。今年の禿がノートルダム学院小学校に通う双子の兄弟というのもちょっとした話題です。

 祇園祭のハイライトのひとつは23基の山鉾が巡行する17日の前(さき)祭の山鉾巡行。先頭をゆく長刀鉾に搭乗した稚児が、神域との境界を示す注連縄(しめなわ)を太刀でバサッと斬って、巡行の幕開けを告げる注連縄切りが最大の見せ場となります。巡行コースを清めはらう太平の舞もお稚児さんの役割です。

 今では長刀鉾が唯一となりましたが、かつて生稚児が搭乗していた鉾に稚児人形が乗せられています。函谷鉾「嘉多丸」、月鉾「於菟麿(おとまろ)」、菊水鉾「菊丸」、放下鉾「三光丸」、そして鶏鉾にも稚児人形が乗っていますので、お見逃しなく。搭乗はしませんが、四条傘鉾と綾傘鉾でも毎年稚児さんが行事に参加しています。24日に11基の山鉾が巡行する後祭・山鉾巡行も含め、全部で34基ある山鉾の楽しみ方は後ほど。

 ところで、祇園祭で忘れてはいけないのが、八坂神社の神事という側面。稚児と禿はこの日だけではなく、1日の吉符(きっぷ)入りからひと月の間、さまざまな神事を務めます。祭のルーツを知り、そのご利益を授かるのも祇園祭の醍醐味です。