不幸世代コンビの佐藤家と対照的な
バブル世代を含む兄の家族

 佐藤さんは会社員だった期間(厚生年金の給付対象)もありましたが、脱サラして喫茶店を経営した期間(国民年金の給付対象)もあります。

 妻は育児と家族の介護をしていたため、無職とパートをしていた期間が長く、2人合わせても年金は月に13万円しかもらえません。

 これまでは喫茶店の収入が月10万円前後あったので、年金と合わせればなんとか暮らせると思っていたのです。ところが、足腰が弱り、ついに腰痛もひどくなり、とうとう店を閉めることになりました。あてにしていた10万円の収入がゼロになったのです。

 2人合わせて年金月13万円では、家賃と生活費が払えません。本来なら、年金生活になる安い家賃の部屋に引っ越すべきです。

 ところが、佐藤さんは、息子と娘、孫1人と同居しているため、少なくとも3LDKの広さが必要です。千葉の職場に通い、残業で帰りが遅い息子と、少し離れた神奈川に通勤している娘の利便性も考えると、安易に都内から引っ越すわけにもいきません。すでに家賃は10万円かかっています。

 なんとか2人を自立させたいのですが、氷河期世代の息子(47歳)は派遣社員を経て退社、数年間のひきこもり後、現在はフリーランス。年収は200万円前後しかなく、独身です。

 娘(43歳)は、中堅規模の証券会社の派遣社員から転職、その後も派遣社員をしていて収入は月20万円前後しかありません。その上、離婚して、孫(5歳)を連れて実家に出戻ってきました。佐藤さん夫婦はカツカツ状態の子ども2人に加えて孫の面倒まで見なければなりません。

佐藤さんは、「世代ガチャだ」と悲観しています。なぜなら、佐藤さんの兄(現在83歳)は元銀行員で、その子ども(59歳)はバブル世代であり保険会社に就職しています。兄も子どももマンションを購入済みで、厚生年金の受給対象であるから十分に暮らせます。

 世代が違うだけで、こんなに生涯賃金や年金額に差が出てしまっているのです。これまで比較しないようにしていましたが、定年後は、差が歴然となり、みじめな気持ちになるといいます。