厄除けの和菓子「水無月」を食べて無病息災!

「仙太郎」(下京区)の水無月は、手前のプレーンと奥の抹茶のほか、黒糖風味も「仙太郎」(下京区)の水無月は、手前のプレーンと奥の抹茶のほか、黒糖風味も

 冬至の日には「かぼちゃの炊いたん(煮物)」を食べて中風よけ、体を芯から温めます。夏至の期間中に迎える「夏越の祓」の日、京都では「水無月(みなづき)」という和菓子をいただく風習があります。和菓子屋さんのショーケースの中に、すでに並んでいる水無月が「夏越の祓の日はもうまもなくですよ」と、私たちに教えてくれます。

 水無月のルーツは平安時代。旧暦6月は、新暦の7月上旬~8月初旬に当たり、暑さがピークを迎えるころです。冷凍庫の元祖のようなものである「氷室(ひむろ)」は、冬の氷を保存するため山間部の穴蔵に茅や木の小枝を敷いてしつらえたものですが、貴族は真夏に氷室から都に運ばれた氷を口にし、暑気払いをしたということです。

 氷室の氷が手に届くはずもない庶民は、米粉を蒸した生地を三角形に切って、氷のカケラに見立てました。これが「水無月」の原型です。「魔を滅する」から転じた「まめ(豆)」に厄よけの願いを込めて炊いた小豆を乗せるようになり、いまの形に進化を遂げていきました。

 この水無月、氷のカケラに見立てた三角の生地の上に小豆を乗せる点は共通しています。小麦粉や米粉を使ったもちもちの外郎(ういろう)生地が一般的ですが、葛やお麩を使ったものも。素材そのままのプレーン以外にも、抹茶や黒糖などで風味付けしたものもあります。お店ごとの個性を食べ比べて味わうのも楽しいものです。

 定番の水無月を経験してみたいなら、老舗京菓子店「鍵善良房」に立ち寄ってはいかがでしょう。安井金比羅宮から祇園にある四条本店までは徒歩7分、高台寺店までは徒歩5分。併設の喫茶で、冷たい煎茶や抹茶と共にいただくこともできます。水無月の販売は、高台寺店が30日(月)まで、四条本店は1日早い29日(日)までなのでご注意を。

 おすすめは、イートイン限定で作家の水上勉も愛した涼菓「くずきり」。注文を受けてから吉野の葛を練り上げて作られ、氷入りの器で運ばれてきますので、この出来立てをすくい上げて黒蜜に浸していただきます。透明感のあるたたずまいと葛の上品な風味、つるんと滑り込むのど越しの良さといったら!  暑さで熱を帯びた体も一瞬でクールダウンできます。時間が経つと白濁してしまうので、喫茶だけのお楽しみとなっています。くずきりで涼を得た後に、おみやげに水無月を買って帰りましょう。

 茅の輪をくぐり、水無月を食べて厄を払い、無病息災を願いながら、25年の後半年を健やかに過ごしてまいりましょう。

【本文で紹介した名所ほか関連リンク集】
京都市観光協会 護王神社 今宮神社 藤森神社 安井金比羅宮 小多福 鍵善良房