健康診断結果などが、基準範囲からの逸脱によって、BやDなどと判定されるのも同様の意味合いです。

「Aじゃなくても、Dじゃなければセーフ」と誤解されやすいですが、単純に基準範囲からどれくらい離れているかを示したものです。

 基準範囲内の結果をAと評価します。Bの範囲の数値が、本人のウェルビーイングにとって最適という場合もあるので、疾病の発症によって健康ではないほうに傾いた結果、標準範囲に入り、BからAに変化する場合もあるのです。

健康リスクが低い人は
毎日何時間寝ている?

 たとえば血圧は連続値で、日内変動や季節変動があり、同じ人でも拍動ごとに絶対的な数値は変動する上、マンシェットの巻き方など人的な要素によっても数値は変わります。収縮期血圧140mmHg以上が高血圧なら、139mmHgがセーフというわけではありません。

 先行研究によって7時間半から8時間の睡眠時間が最も健康リスクが低いことがわかっているので、睡眠時間と事故の発生率や病気の発症率、全死因死亡率などのリスクとの関係を証明するための研究では、睡眠時間の基準範囲を7時間半から8時間を含む範囲に設定するのが一般的です。

 たとえば、次ページの図3では、調査の層別項目の表現が5時間以下、6時間…、9時間以上で、基準値を7時間に設定しています。7時間に比べると、どの睡眠時間も健康リスクが高くなるという結果なのですが、この結果を、「9時間以上に比べて6時間のほうが健康」という情報として捉えてしまうのは、間違いです。

睡眠時間と健康リスクの関係同書より転載
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