とはいえ、睡眠は原始的な生命活動で、本能、すなわち生物学的な因子によって決定されるものです。

 睡眠が精神的な因子に影響を受けるのはまだわかるけれど、覚醒中の睡眠マネジメントという社会的な因子と関係するというのはピンとこないかもしれません。

国ごとの平均睡眠時間で分かる
日本と韓国の共通点とは?

 睡眠と社会的因子の関係のヒントとして、図2にOECD(経済協力開発機構)の統計(Gender Data Portal 2021)によるOECD加盟国ごとの睡眠時間と総務省社会生活基本調査(2022年)による日本の有業者の平均睡眠時間、445分を示します。

OECD加盟国の平均睡眠時間同書より転載
拡大画像表示

 国ごとに平均睡眠時間に差が出るという疫学的な事実によって、睡眠時間が地理や気候、国民性など社会的な因子の影響を大きく受けていることがわかるのではないでしょうか。

 各国の平均睡眠時間の平均(以下、「OECD全体平均」)は505分です。加盟国の3分の2でOECD全体平均より国ごとの平均睡眠時間が長く、OECD全体平均を下回る7国の中で、国ごとの平均睡眠時間が8時間未満なのは、韓国と日本だけです。

 韓国と日本は、アジア人という人種的な共通点があるので、社会的な因子というより、生物学的な因子が影響しているとも考えられます。

 そこで、米国と英国の睡眠時間の差に注目してください。米国と英国の遺伝学的なルーツにも共通点があります。

 それなのに両国間に差異があるということは、生物学的、遺伝学的な因子ではなく、社会的な因子によって、睡眠時間に差が生じることが予想できます。