睡眠が足りない人が
目指すべき睡眠時間
セミナーなどで私は9時間未満の臥床時間の方には、9時間まで臥床時間を延ばすよう指導することを推奨しています。

「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(以下、「睡眠ガイド2023」)には、「健康日本21(第三次)」における休養・睡眠分野の「睡眠時間が充分に確保できているものの増加」という目標の指標として、「睡眠時間が6~9時間の者の割合」を60%以上にすることが掲げられているのに、9時間を目指すのは長すぎるのではないかというご質問をいただくことがあります。
もし、現在の臥床時間が6時間未満で、睡眠課題がある場合には、9時間を目指す際に、必ず6時間も7時間も通りますから、その時点で睡眠課題が解決すれば、それが当人にとっての好ましい睡眠時間である可能性が高いです。
6時間以上、7時間以上、臥床していても睡眠課題が解決しない場合は、8時間以上、9時間以上の臥床時間が必要な人なのかもしれません。これは単純に個体による多様性の問題です。
個体によって生物学的に好ましい睡眠時間は多様ですが、生物学的にベストな睡眠時間が8時間前後の方が最も多く、疫学的事実として日本の働く人には睡眠不足の方が圧倒的に多いので、私はシンプルに9時間を目指すことを推奨しています。睡眠時間が習慣的に6時間未満の方でも、9時間を目指せば、まず6時間以上の関門を通るからです。
私は本記事では、横になる時間は、8時間25分がベストだと主張します。その根拠のひとつは、OECD全体平均だからです。
そして、私の知る限り、毎日、規則正しく8時間25分以上の睡眠を確保している働く人は、ほとんどいないからです。人によって、最も健康リスクの少ない睡眠時間は多様ですが、正規分布し、その中央値を8時間25分に設定して、大きな間違いはありません。8時間25分や9時間より長い睡眠時間でも、問題がなければあえて短くする必要はありません。