旧海部町では抑うつ症状がある人は、早めに精神科を受診して医師に相談するそうです。ソーシャルサポートが少ないと死亡率が上がるという研究を紹介しましたが、旧海部町の場合、ソーシャルサポートが多いことで自殺率が下がるという結果が得られたわけで、やはりソーシャルサポートやサポート資源が多いことの重要性がわかります。

 このような話をすると、「自分ばかりが依存するのは甘えではないか」「サポートばかりしてもらうのは心苦しい」といったコメントをもらうことがよくあります。

書影『自分にやさしくする生き方』(伊藤絵美、筑摩書房)『自分にやさしくする生き方』(伊藤絵美、筑摩書房)

 もちろん人と人との関わりは相互的ですから、元気なときには自分も誰かの依存先になり、その人をサポートすることもできるでしょうし、それを望む気持ちはわかります。

 また元気で余力があるときに、誰かのサポートをすると、「ああ、自分は誰かの役に立てるんだ、誰かの助けになれるんだ」と思うことができ、自己効力感(「自分が機能できている」という感覚)が強化されるので、そのこと自体が「自分にやさしくする生き方」にもつながります。

 ですから最終的にはこのような相互サポートを目指したいのですが、元気じゃないとき、弱っているときこそ、「自分にやさしくする生き方」が求められるわけで、そういうときは相互サポートではなく、まずは自分がサポート資源に頼ること、サポート資源から支援やケアを受けることを優先してください。

 それは絶対に必要なことであり、なんら恥じることはありません。それどころか、「自分は自分にやさしくすることができているんだ」と胸を張っていただきたいと思います。