ソーシャルサポートが少ない人は、そうでない人よりも死亡する確率が高い、という衝撃的な事実を示した研究もあります。端的に言えば、孤独や孤立は人々の心身の健康を損ない、人を死に近づけます。人だけではありません。孤立したネズミは、仲間と一緒にいられるネズミと比べて、薬物依存症になりやすいという研究があるくらいです。
一時的な孤独や孤立はストレッサー(編集部注/ストレスの原因として自分に降りかかってくる刺激や出来事)の衝撃を間接的に和らげるとも言われていますが、そもそも孤独や孤立それ自体が強烈なストレッサーになりえます。
「誰も助けてくれない」「誰も私の話を聞いてくれない」「頼りになる人が1人もいない」「誰も信じられない」「私はいつもひとりぼっちだ」という思いを抱いている人が、幸せであるわけがありませんよね。その思いを生じさせる環境や状況こそが大きなストレッサーであり、人を苦しめます。だからこそ私たちは孤立してはならないのです。
自分にやさしくなるには
上手に頼る力が必要
「自分にやさしくする生き方」はひとりぼっちで実践するものではありません。孤立を防ぎ、他者からのサポートを受け、余裕があれば自分も他者のサポートをし、サポートし合って生きていくなかでこそ、「自分にやさしくする生き方」は可能になります。
私は別の著書で次のように書きました。
「セルフケア」とは確かに「自分で自分を助けること」ですが、それは決して「人の助けを借りず、ひとりっきりで、自分を助けましょう」ということではありません。「自立とは依存先を増やすこと」という名言(熊谷晋一郎さんという医師でもあり脳性まひの当事者でもある人の言葉)がありますが、私たちは互いに頼り、頼られる関わりのなかでこそ、自立して生きていけるのです。
「そんなこと言ったって、自分には頼れる人なんか、ひとりもいない」と思う人もいるでしょう。
重要なのは、今、誰かに頼ることだけでなく、「頼れる人を探す」「心のなかで誰かを思い浮かべる」「人間じゃなくてもいいから誰かと一緒にいる」ということでも、それは心理学的には確かに「誰かとつながる」ことになる、ということです。少なくとも「心をひとりにしない」ということです。(『セルフケアの道具箱』58-59頁)
「そんなこと言ったって、自分には頼れる人なんか、ひとりもいない」と思う人もいるでしょう。
重要なのは、今、誰かに頼ることだけでなく、「頼れる人を探す」「心のなかで誰かを思い浮かべる」「人間じゃなくてもいいから誰かと一緒にいる」ということでも、それは心理学的には確かに「誰かとつながる」ことになる、ということです。少なくとも「心をひとりにしない」ということです。(『セルフケアの道具箱』58-59頁)