多くの場合、苗字も夫の苗字に変わるケースが圧倒的に多く、実家とは距離を置いた環境で舅や姑にこき使われるリスクが発生します。
「うちの家に入ったのだから、うちのルールにはしたがってもらうよ」という極めて古い家族観に支配されるリスクです。
そこで政治的にはジェンダー解放という運動が起きます。極端に言えば結婚という制度自体を無くしたほうがいい。そのほうが女性は自由に生きられるという考え方につながります。その男女の平等をめざした第一歩として注視されているのが「夫婦の選択的別姓制度」です。
ここで誤解されるといけないので先に説明しておきます。儒教国である韓国も中国も、日本とは違い夫婦別姓です。私が受けた説明では、韓国では嫁を同じ家の人間と認めたくないという理由で夫婦別姓が定着しているといいます。一方で韓国では子どもが生まれたら自動的に父親の苗字になります。
また戦後の中国やベトナムでは社会主義思想が浸透したことで三従(結婚前は父、結婚後は夫、夫の死後は息子に従う)のような儒教の影響は弱まっています。儒教的な社会制度は国によって表れ方は異なるのです。
実際、上川法務大臣(2020年当時)が国会で答弁しているように夫婦同姓の国は日本だけです。ですから因果関係を整理すると、儒教国では女性の立場が社会的に弱くなる土壌があり、儒教国の日本では古い家族制度が女性の重荷になっている。それを打破する最初の一歩として、選択的夫婦別姓を認めさせる政治的な動きがあるというのがここでの問題提起です。
つまり日本に限った話として、選択的夫婦別姓が制度化されることで、結婚後に姑が「あなたは○○家の一員になったのだから」と理不尽な要求をしてくるリスクを減らすことができるかもしれないという効果が期待されるのです。
この「家に縛られるリスクが社会全体で結婚率を下げているのではないか?」という仮説には、いくつか傍証があります。