たとえば先ほどのグラフで、日本や韓国の間に別の先進国が入っています。どこの国だろうと思って調べてみると、イタリアとスペインでした。どちらも細部は少し異なりますが、家族の絆がとても強い社会であるという共通点があります。儒教とは関係ないけれども、新しい家族ができることがストレスになる社会だという点では同じという意味です。

 一方でアメリカのように離婚しやすく、ある意味で自分が決めさえすれば自由に元の家族から離れることができる国では、結婚率は上がり、結果的に出生率が高くなるようにグラフからは読み取れます。実際、アメリカは一人当たりGDPが8万ドルを超える豊かな国でありながら、出生率も1.62と日本から見ればうらやましい水準をキープしています。

 そして冒頭の話に戻るのですが、この考え方は保守系の政治家にとって非常に不都合な話になるのです。

 少子化が日本にとって最も重要な解決すべき問題であるとすれば、その解決策は結婚率を上げることです。ここまではいいのですが、その結婚率を上げるためには旧態依然とした日本の家族制度をぶち壊す必要があるというのがグラフから読み取れる仮説なのです。

 保守系の政治家にとっては、それだけは絶対にやりたくない政策です。

 選択的夫婦別姓の議論については国民みんなが疑問に感じているおかしな状況が生まれています。NHKの世論調査では3分の2前後の人が選択的夫婦別姓に賛成しています。選びたい人が選べるという制度ですから、本当は反対する理由はないはずです。

 選択の自由という視点で考えると、たとえば万博に行きたい人は行くし万博が嫌いな人は行かなければいいだけです。肉を食べたい人は食べるし、食べたくないヴィーガンの人は食べなくていい。選択の自由自体に反対する理由は、普通はありません。

 ところがこれも国民みんなが知っている話ですが、その選択的夫婦別姓だけはなかなか国会で議論すらさせてもらえなかった。最近ようやく議論が始まったことと、与党が衆参両院で過半数を割り込んだことは無関係ではありません。